訪問看護ステーションの「サテライト」とは?

厚生労働省は、訪問看護の重要性や必要性から、訪問看護ステーションのサテライト事業所の運営を認めています。

「サテライト」とは、いわゆる出張所のことです。例えば、公共交通機関が十分に整備されていないような地域には、診療所の出張所があります。これらと同じように、訪問看護ステーションの出張所が「サテライト」と言われるものです。

厚生労働省は、平成20年12月24日付けでサテライト事業の設置基準の緩和を通知しました。設置条件を満たせば、訪問看護ステーションの出張所を設置することができるのです。

ここでは、訪問看護ステーションのサテライトについてわかりやすく解説していきます。

1. 訪問看護ステーションのサテライトを作るメリットとは?

訪問看護ステーションを開設するためには、病院やクリニックを開業する時と同じように、いくつもの条件を満たす必要があります。

具体的には、人員の確保や設備基準などがあります。しかし、こうした基準を満たすことが難しい場合があり、訪問看護が必要なのに提供できないことが生じています。

例えば、山間部や高齢化と過疎化が進む地域です。訪問看護を必要としている人が増えているにもかかわらず、交通機関の問題や過疎化によって訪問看護を受けることが難しい地域があるのです。

こうした地域に訪問看護ステーションのサテライト(出張所)を開設することにより、人材不足の問題を補うことができるようになります。

なぜなら、サテライトは通常の訪問看護ステーションよりも少ない人員でも設置できるからです。

つまり、「人材不足」の対策と言えます。

2. 訪問看護ステーションのサテライトに関する施設基準・運営規定

それでは、具体的な施設基準について確認していきましょう。

①利用申込みに係る調整、指定訪問看護の提供状況の把握、職員に対する技術指導等が一体的に行われること。

②職員の勤務体制、勤務内容等が一元的に管理されていること。必要な場合に随時、主たる事業所や他の出張所との間で相互支援が行われる体制(例えば、主たる事業所から急遽代替要員を派遣できるような体制)にあること。

③苦情処理や損害賠償等に際して、一体的な対応ができる体制にあること。

④事業の目的や運営方針、営業日や営業時間、利用料等を定める同一の運営規程が定められること。

⑤人事、給与、福利厚生等の勤務条件等による職員管理が一元的に行われること。

引用:厚生労働省

もちろん出張所ですので、その母体となる訪問看護ステーションが必要であることは前提条件です。

また、厚生労働省の通知文の中には、次のような表現もあります。

山間部や過疎地域において下記の出張所設置の要件を満たす場合については、都道府県等を越えた出張所を含めた訪問看護事業所の指定を行うなど、地域の実情等を踏まえ、積極的に本制度を活用いただくよう更なる周知をお願いいたします。

つまり、サテライト(出張所)の設置は、都道府県を跨いで設置することができるということです。それだけ訪問看護が必要とされ、基盤整備が急務となっているとも言い換えることができます。

このサテライトを利用すれば、高齢化、過疎化、通院手段の問題などにより、医療を受けることが難しい方々や地域にも訪問看護を提供することが可能となるのです。

3. 訪問看護ステーションのサテライトの実際

現在日本が抱える高齢化問題に対応するべく、訪問看護ステーションのサテライト設置が認められています。これが現実となれば、「住みなれた場所、地域」で医療や看護を受けながら、安心して暮らすことができるようになります。

では、実際にどれくらいのサテライトが設置されているのでしょうか。

全国訪問看護事業協会の調査によると、平成28年4月1日時点において全国に789のサテライトがあることが分かっています。

都道府県別のサテライト数を見てみると、上位3つは以下のようになっています。

  • 大阪・・・139
  • 東京・・・114
  • 北海・・・68

逆に、サテライトが一つもない都道府県もあります。

  • 和歌山
  • 香川
  • 福岡
  • 佐賀

こうしてみると、東京や大阪などの都心部にはサテライトが多く、離島や山間部のある県ではサテライトが設置されていないことがわかります。

訪問看護ステーション数で見ると、東京や大阪は上位に位置しているのですが、なぜ、訪問看護ステーションが充実しているはずの地域の方がサテライトも多くなっているのでしょうか。先ほどお伝えしたサテライトのメリットを生かすことができていないようにも見て取れます。

4. 訪問看護ステーションのサテライトを設置しようとした動機

訪問看護の提供が不足している地域にサテライトを設置すれば、住み慣れた地域で安心して最期まで暮らすことができるようになります。

しかし、現実には都心部にサテライトが多くなっていました。なぜこのような結果になっているのかについては、厚生労働省が行った、「サテライト設置申請の調査結果」から読み取ることができます。

これによると、サテライト設置の申請を行った動機は、次のようになっています。

  1. 職員の利便性を高める(48.1%)
  2. 利用者の拡大(43.3%)
  3. 3サテライト設置申請地域の利用者のニーズがあるため(30.8%)

1と2は、事業所目線の動機であることが分かります。つまり、事業を拡大するために、サテライトの設置申請を行ったということです。

一方で、訪問看護の行き届いていない地域からのニーズによる設置は少なくなっているのです。

つまり、訪問看護ステーションの数が増えている都心部においても、人材不足があったり基盤が安定していないことがわかります。

確かにサテライトのメリットはありますし需要も増えているのですが、現段階としては、既存の訪問看護ステーションの基盤を整える段階だといえるでしょう。

5. 訪問看護ステーションのサテライトを設置した効果

厚生労働省が行った、「サテライト設置申請の調査結果」には、実際にサテライトを設置することで得られた効果についての調査結果もあります。

  1. 移動距離又は移動時間の短縮(49.0%)
  2. 訪問件数の増加(29.8%)
  3. 利用者のニーズに対応できるようになった(26.9%)
  4. 収入の増大(18.3%)

1,2,4は既存の訪問看護ステーションにとってのメリットです。サテライトの設置によって、看護師の移動距離が短くなり、訪問件数が増えたため、収入が増大したのです。

一方で、訪問看護に対するニーズをみたすことができるようになった割合は少なくなっています。

この結果からも、訪問看護が足りていない地域への拡大というサテライトのメリットは発揮されていないのかもしれません。

6. サテライトで訪問看護ニーズに応えよう!そのためには、人員確保が必須!

2025年問題をはじめ、高齢化による訪問看護ニーズは急増しています。例えば、山間部や過疎化が進んでいるような地域では、満足な訪問看護が提供できていません。

この問題を解消するためにサテライト設置があります。

これを利用すれば、既存の訪問看護ステーションに勤務している看護師が出張所という形で出向くことができるからです。マンパワーが不足している地域にとっては、非常に有効だと言えるでしょう。

しかし、実際には都心部における設置が多くなっています。サテライトによる効果が発揮できていないとも言えるでしょう。

これもやはり、人材不足が影響していると考えれます。そもそも、サテライトを展開するには、既存の訪問看護ステーションが安定していなくてはならないのです。しかし、現実には看護師不足に悩ませれているところが多いのです。

つまり、現段階では既存の訪問看護ステーションの基盤整備の段階だと言えるでしょう。訪問看護師の確保が急務となっています。