訪問看護師の役割|ALSに対する看護内容とは?

近年、在宅療養をされる方の中には、高度な医療処置が必要となる方が増えているため、訪問看護師の役割が重要になっています。

特に、人工呼吸器を使用されているALS患者さまやそのご家族さまが安心して在宅生活を過ごすためには訪問看護師の存在がなくてはなりません。

今回は、ALS患者様に対する訪問看護師の役割を詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

1. ALSに対する訪問看護師の役割

1-1. 人工呼吸器の管理や呼吸ケア

最近は高度な医学的処置が必要な方が訪問看護を利用されるケースが増えてきました。その中でも、人工呼吸器管理は重要な役割となっています。

具体的な内容としては、

  • 人工呼吸器のセッティング
  • 人工呼吸器の作動チェック
  • 加湿状態の確認
  • 気道内圧の確認
  • 痰の貯留部位の確認
  • 痰の性状の確認
  • 排痰介助(体位ドレナージ、タッピングなど)
  • 呼吸リハビリテーション

こうしたことが挙げられます。

また、同時にご利用者様の呼吸機能の確認や呼吸ケアが必要になります。

  • 痰の吸引
  • 呼吸音の確認
  • 呼吸数の確認
  • 呼吸様式の確認
  • 呼吸器との同調性の確認
  • 冷感や浮腫の確認

こうした看護内容は、病院内での人工呼吸器管理と変わりありません。しかし、訪問看護の場合には、以下にお伝えするようなご家族様や地域スタッフとの連携が重要になってきます。

1-2. ご家族様の負担軽減(レスパイト)

病院内では人工呼吸器の管理や痰の吸引を家族が行うことはほとんどありません。自宅退院へ向けた指導を家族へ行うことはあったとしても、1日中家族が対応することはありません。

しかし、在宅においては家族の負担が大きくなります。そこで、訪問看護や介護、ヘルパーなどが支援を行っているのですが、特に人工呼吸器などの医療的な処置に関しては家族の負担は大きくなります。

なぜなら、介護士やケアマネージャーなどは、人工呼吸器の管理や吸引ができないからです。また、訪問看護師の滞在時間も限られているため、家族にかかる負担は大きくなるのです。

これは、精神的な負担も意味しています。人工呼吸器に関する知識も、吸引技術も不安を感じながら過ごされているからです。

厚生労働省の資料では、主介護者の多くは配偶者であり、主介護者を支える副介護者(例えば子供など)がいない場合が11%もあるというデータもあります。

こうした状況が24時間続くことになるため、家族の負担軽減も訪問看護の重要な役割になります。(厚生労働省「「ALS 等人工呼吸器管理を必要とする 在宅療養に関する実態調査」」

1-3. 家族への吸引指導(技術支援)

家族の負担軽減としては、具体的には吸引指導だったり、人工呼吸器や身体的な症状に関する不安に応えることになります。

在宅で人工呼吸器を導入する際には、家族への吸引指導が行われていますが、看護師のように医学的な知識や経験はありません。

そのため、手技に不安を感じていることはもちろんですが、手技内容に問題があったり、清潔環境の保持ができていなかったりすることも珍しくはありません。

こうしたことに訪問看護師が注意を向け、適切に指導をすることが重要な役割になります。

吸引を含め、家族への技術支援項目に関しては以下を確認してください。

  1. 気管内吸引(カニューレ内部まで)
  2. 口腔鼻腔吸引
  3. 低圧持続吸引
  4. 用手式加圧バックの使い方
  5. 気管切開カニューレのカフエア確認
  6. 人工呼吸器の基本知識(気管切開下人工換気)
  7. 人工呼吸器の取り扱いの実際

引用:日本看護協会「人工呼吸器装着中の在宅ALS患者の療養支援 訪問看護従事者マニュアル」

1-4. 家族以外への痰の吸引指導、確認

ここまでお伝えしたように家族にかかる負担が大きなものになっていることがおわかりいただけると思います。

そこで、この負担を軽減するための措置として、一定の条件下であれば、家族以外の痰の吸引が許容されました。

一定の条件には以下の6項目があります。

  1. 療養環境の管理
  2. 患者・障害者の適切な医学的管理
  3. 家族以外の者に対する教育
  4. 患者・障害者との関係
  5. 医師及び看護職員との連携による適正なたんの吸引の実施
  6. 緊急時の連絡・支援体制の確保

引用:厚生労働省「在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引の取扱いに関する取りまとめ」

詳細については以下の表で確認してください。

1-5. 緊急時の支援、連携確保

このように、在宅生活をされるALSのご利用者さまやその家族を支えるためには、チーム医療が欠かすことができません。

具体的には、主治医、訪問看護ステーション、各医療機関、訪問介護、人工呼吸器の業者、福祉用具業者、保健所など様々な関係機関との連携が必要なります。

こうした中で、訪問看護師は連携の中心となります。定期的に訪問することはもちろんですが、オンコールなどにより緊急時の対応まで行なっているからです。

在宅で過ごすALSの方やそのご家族さまにとって、訪問看護師は在宅生活の要となっているとも言えるでしょう。

2. ALSに対する訪問看護サービスは医療保険を使う

ここで、訪問看護サービスの制度的な内容も確認していきます。

2-1. 医療保険による訪問看護サービス

まずALSは「厚生労働大臣が定める疾患等」に該当するため、医療保険による訪問看護サービスの提供になります。

2-2. 訪問可能な回数と時間

医療保険を利用する場合、通常は週に3回までの訪問となりますが、ALSの場合(厚生労働大臣が定める疾患等に該当する場合)には週4日までの訪問が可能になります。

また、通常1回の訪問時間は30分から90分となりますが、こちらも週に1回限り90分以上の利用が可能になります。

3. ALSに対する訪問看護師の役割まとめ

高度な医療処置を必要としている在宅患者様が増えました。そのため、訪問看護師の役割が重要になっています。

特に今回お伝えしてきたALSに関しては、人工呼吸器管理が大切な役割になります。

ご利用者様のご利用者様の呼吸ケアだけではなく、呼吸器の管理やご家族様への指導や不安や悩みに関する相談役としても欠かすことができません。

人工呼吸器を必要とされるご利用者様は今後も増加することが考えられますので、ますます訪問看護師の需要が高まるでしょう。